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武藤校長による『芝漬流子育て』 vol.5


朝の自立が、男子の自信になっていく

朝、お子さんは一人で時間になったら起きて来られるでしょうか?
低学年ではまだお母さんが起こしているという家庭も多いかもしれませんが、朝時間に起きる、身支度をする、朝食をきちんととる、時間に間に合うように家を出る、といった一連の流れを一人でできるように少しずつ変えていくことをお勧めします。
朝起きるのが遅くなれば、その後の準備にバタバタしてしまう。そしてその慌てた気持ちのまま家を飛び出して、1日のスタートを切ってしまいます。忘れ物もしがちです。
朝の習慣を自分でできることは、これから成長していく過程できっと自信につながるはずです。



「おはよう!」の一言でも、生徒たちの様子が伝わってきます。実際に芝に通う12〜18歳の中高生男子の朝がどんなふうに始まるのか、お伝えしましょう。

芝の始業時間は、日本一早いかもしれません。朝8時に1限目が始まります。私は毎朝7時過ぎから玄関に立ち、生徒たちに声をかけます。思春期の男子だからこそ難しい時期があって当たり前。毎日みんなが元気に挨拶できるとは思っていません。それでも私はめげずに毎日1時間以上立ち、約1700人いる生徒たちに挨拶を続けます。

シャイで無口と言われる男子ですが、果たしてそうでしょうか。
「おはよう!」への短い返事は、冗長に彼らの生活や心身の変化を語ります。

挨拶で分かる生徒の様子

――7時過ぎ 朝一番の大器晩成型メンバ――
「ウイッス」「ウイッス」
朝7時過ぎに最初にやってくるメンバーはだいたい同じ顔ぶれ。部活動の朝練がある生徒は集団で手短に挨拶していきます。
「おはようございます!」
部活動がなくても、朝は早い生徒もいます。元気にしっかりと挨拶を返す。「うちの子はマイペースで心配です」という親御さんもいますが、こうして早い時間に毎日登校してくる子は大器晩成型。成績も活動も、後から着実にぐいぐいと伸びてきます

――7時半過ぎ 登校のピークは十人十色――
「おはようございます」
あちらから挨拶をしてくれる子、軽く会釈だけする子、こちらが言えば小さく「おはようございます…」と返す子。一番多い登校時間には多くの生徒が通るので、仲間に紛れて挨拶をせずスッと通り過ぎてしまう子もいますが、めげずに全員に声をかけます。
「……(無言で伏し目がち)」
小声でもいつもは返事してくれる生徒が無言でなんだか元気がない。「どうした?」と声をかけると「ちょっと親と喧嘩しちゃって……」などと悩みを話してくれる子も。日々の気持ちの上下はあっても、安定した時間に毎日通えているのは、心身も安定して学校生活に迎えています

――8時少し前 遅刻ギリギリのうっかり男子たち―
「おはよーっす(バタバタ)」
慌てて駆け込んでくるギリギリ登校のメンバーは、比較的同じ顔ぶれ。残念ながら登校ギリギリチームには、忘れ物の多い子、時間にルーズな子、言い訳をすぐする子が多いのが実情です。「お母さんが起こしてくれなかったから」と人のせいにしがちで、まだ自分事としてきちんと捉えられていないのでしょう。

――遅刻組 素直で可愛い少年たちではあるが―
生徒「寝過ごしました」
私 「どこまで行ったの?」
生徒「海が見えました!」

生徒「電車の遅延です」
私 「どのくらい遅れたの?」
生徒「15分です!」
私 「今は8時半だけどね」

ベテランは正門の扉を自分で開けて歩いてくるし、初心者は正門の前をうろちょろして、正門の扉を解錠してもらって走ってくる。理由については素直で、ありのままの自分をさらけだして可愛い。アクシデントは起こるし、予想を超えた出来事には大人でも対応が難しいし動揺もする。遅刻はしないに越したことはない。しかし、理由をしっかり見てあげることで、自分の行動を考えることに繋がるのなら大切なことだと思う。
心の中でつぶやいた『これを最後の遅刻にするんだよ。』

 

自分で成長できるチャンスを奪わない注意を

芝の校訓「遵法自治」とは、遵法=法やルール、真理にきちんと従うこと。そして自治=自主・自律の態度で自分を治めることです。自ら考え、自ら行動を起こすことで、自らの人生の歩み方が変わります。
朝起きる、身支度をして、きちんと間に合う時間に登校する。それだけのことでも、自主・自律の一歩です。

親として見ていると、いろいろのんびりである男子はつい朝起こしてあげたり、準備を手伝ってあげたりと親は手をかけがちです。
でも、少しずつ手を離してあげなければ、彼らはいつまでも自律へのチャンスを逃してしまいます。
いろいろ手をかけながらも「そのうち自分でやるようになるでしょう」を思っていると、親子で成長の機会を逃してしまうかもしれません。小学生のうちから、アラームをセットする、前の日に洋服や時間割を用意するなど、1つずつ自分でできるようにサポートしてあげるといいですよね。

本校で大事にしている言葉の1つが「手を離して抱きしめる」です。ついつい我が子をギュッと抱きしめてしまいますが、時期を見ながら少しずつ手を離すことも子供のためには不可欠です。親が手を離しても、子供は抱きしめられた感触をしっかり思い出して歩んでいけるのです

親が一歩引いて“聴く”姿勢で、子供は大きく成長する

私の朝の挨拶は、8時過ぎになると生活指導の先生が加わり、私と2人体制に。すでに遅刻の時間帯になり、駆け込んでくる子もいれば、諦めてゆっくりとふてくされたように歩いてくる子もいます。

私 「おはよう!どうした?」
生徒「遅刻しました」
私 「それは知っている。どうしたの?」
生徒「寝坊しました」
私 「そうか、起きられなかったんだな。でもよく来たな」
生徒「……すみません」

そこで初めて、謝罪の言葉が出てくることもあります。
校長と生活指導の先生が立っていれば、必然的に生徒には遅刻の罪悪感も生まれていることでしょう。私からは頭ごなしに怒らずに、とりあえず挨拶をして理由を聞いてみるようにしています。

すると、ある日いつもの遅刻メンバーが早い時間に来るように変わることもあります。
「俺、このままじゃだめだと思って、頑張って起きることにした」
それを聞いたらもう安心。
「お、早く来て偉いな!」と声をかけると嬉し、恥ずかしそうにして、通り過ぎていきました。
きっと彼は大丈夫。様々なことに少しずつ前向きに取り組むことができるでしょう

子供を毎日見ている保護者からすれば、「言わないと起きない」「言わないとやらない」とイライラすることや、やってあげたほうが早いこともたくさんあるでしょう。しかし、そこで一歩引いて、またかと思っても、「こうしたら?」「どうする?」と声をかけて忍耐強く待ってみることで、子供自身に気づくチャンスをあげられます

「おはよう」と声をかけるのも同じこと。生徒の気持ちに上下があっても、こちらは変わらない笑顔とトーンで「おはよう!」と毎日声をかけます。すると、段々積み上がって、心がつながっていくのです。


本校は、こうした「遵法自治」や「手を離して抱きしめる」といったことを日頃から教師みんなで意識して、生徒たちの成長を見守っています。そして、さらに主体的に生徒たちが世界を広げていけるように機会を増やすべく、どんどん改革も進んでいます。
「人間教育の芝」では、自ら学びに向かう力を育て、自分でアクティブに将来を歩みだせる教育を行っています。 

 第15代校長 武藤道郎

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