武藤校長による『芝漬流子育て』 vol.8
8本目となります芝漬け流子育て論『ドラマは家族からしか生まれない』ご覧ください。
一番身近な社会への接点は、親
普段、家庭ではお子さんとどのような話をしていますか?
お子さんは、親御さんの仕事についてどのくらいご存知でしょうか?
子どもとの話す時間を大事にされているご家庭ばかりかと思いますが、今回はその話の中身にフォーカスをしてみましょう。
あるテレビCMの内容です。
大学教授の父親の講義を子どもが見学に行きます。
その帰り道、その講義を受けている大学生の様子を見て、感想を述べたり、父親の見解を聞いたりして一言。
「ボクにもできそうな気がします」。
父親は優しい眼差しで「おやおや、希望が芽生えましたね」と返事をします。
子どもなりに親の仕事を理解して、自分の未来に希望を見た子どもは、親に対して新しい視点と尊敬を持ったのではないでしょうか。
子どもを持つ母親の多くも働いていますので、仕事の話をするのは父親、母親、両者からあっていいと思います。
子どもに見えなくなりつつある親の仕事の“中身”
しかし、最近生徒たちと話していると自分の親の仕事についてあまり知らない子が増えているのです。
生徒たちに聞くと「エンジニア」「デザイナー」「◯◯株式会社」など、職種名や会社名などを答える子が多いのですが、「じゃあ、それはどんなことをしているの?」と聞くと、わからない子が多い。
よくよく考えてみると、親が家庭で子どもたちに話す内容は、子どもの学校や勉強の話やマナーやしつけのために注意することなどが多いのではないでしょうか。
「子どもの話を聞く」ことはもちろん大事ですが、子どもだけが中心の話題だけになってしまっていないですか。
共働きの家庭が増え、親が仕事の話をする機会は増えていると思いますが、実際には仕事の話よりも子どもを中心にした話題の方が圧倒的に話している時間が多いように感じます。
さらにコロナ禍を経て、多くの企業が家族が会社を訪問するようなファミリーデーを辞めてしまったり、テレワークが広がった反面ですべての仕事はパソコンの中で行えてしまったりと、子どもの目から親の仕事の内容がさらに見えなくなってきています。
仕事の魅力、悩み、弱音……子どもに開示してみて
親は、子どもに「うちのパパ/ママは、こんな人だよ」「こんなことしてるんだ」と語られる存在でいてほしいと私は思います。
自分の仕事が何なのかを伝え、子どもがそれを知ることで誇らしく思うかもしれないし、社会への興味を持つ扉にもなります。
例えば、職種や会社名は知っていても、実際にどんな仕事をしているのか、日々どのようなプロジェクトや業務に関わっているのか、どんな思い出その仕事に取り組んでいるのか、ぜひ話してあげてください。
そして、仕事のいい話だけでなく、親が自分の弱みを話したり、弱音を吐いたりしてもいいのです。「子どもに言ってもわからない」と思わないで、良い面も悩みも子どもに話してみてください。
反応が薄くても、響いていないように見えても、その蒔いた種がいつ芽吹くかわかりません。将来的に、その時のことが後から響いてくるかもしれません。
もしかしたら、子どもなりの見解でアドバイスや感想をくれるかもしれない。そうしたら、またそれを受け止めてあげたいですよね。
子どもが親のよきアドバイザーとなる
親は、子どもの前では立派な大人でないといけないと思い込んでいます。
しかし、徐々に子どもが成長してきたら、「私も子どもが大きくなっただけなんだよ」ということをさらけ出し、弱音や悩みを話してもいいと思います。
子どもは、親の一番の応援者なのです。
仕事や悩みなど親の大事な部分を共有しないのは、その応援者を無視していることに他なりません。
よく小さい子どもは率直に無性の愛を授けてくれると言いますが、大きくなってきてもそれは本当は変わらないのです。それに気づいていないのは、親の無知です。
「ワーク・ライフ・バランス」と言われますが、私は「ライフ・ワーク・バランス」だと思っています。最初にくる基盤は、それぞれの生活=「ライフ」にあるべきです。
家庭をマナーやしつけといったものだけの場にせず、ぜひ社会との繋がりの場や良いことも悩みも共有する人の繋がりを学ぶ場にもしてください。楽しいところも弱いところも共有し、さまざまなドラマを共に経験してください。
「ドラマは家族からしか生まれない」
そこから成長も人間関係もスタートしていくと信じています。
第15代校長 武藤道郎